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オールドレンズの35mm版神レンズは?人気銘玉の魅力と注意点を解説

岩本雄二

岩本雄二

オーナーの岩本雄二です。 2011年3月に古物商として起業し、10年以上実店舗を運営してきました。
現在は無店舗型古物商として活動しています。

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こんにちは。【ブランドアンティーク弁天堂】、オーナーの「岩本雄二」です。近年、最新のミラーレスカメラにマウントアダプターを装着して昔の機材を楽しむスタイルが定着していますね。

人間の自然な視野に近くて使いやすい35mmという画角には、特別な描写力を持つ素晴らしい機材がたくさん存在します。オールドレンズの神レンズや35mmの焦点距離を持つ銘玉について調べていると、ライカのズマロンやズミクロン、ズミルックスといった王道から、関連するズミタールなどの50mm帯、さらに寄れるカールツァイスのフレクトゴン、そして国内メーカーのニコンやフォクトレンダーのNOKTONへの関心など、本当に奥深い世界が広がっていることがわかります。

また、お手頃なタクマーの背後には写真家である梶原琢磨の歴史が隠されていたりもします。一方で、販売価格と買取価格の大きな構造的乖離や、正規の販売価格と安価な偽造品の見分け方、シリアルナンバー照合による正規品の鑑別など、購入前に知っておくべき注意点も少なくありません。

この記事では、長年アンティークやブランド品を扱ってきた当店の視点から、特定の機材がなぜ高く評価されるのか、そして安全に本物を楽しむためにはどうすればいいのかを、総括として詳しくお話ししていこうかなと思います。

この記事のポイント

  • ライカやカールツァイスなど代表的な35mm銘玉の特徴と魅力
  • タクマー誕生に秘められた米国写真家である梶原琢磨の歴史
  • 中古市場における販売価格と買取価格の構造的な乖離の理由
  • 悪質な偽造品を見分け安全に正規品を購入するための防衛策

オールドレンズの神レンズ35mmの魅力

オールドレンズの神レンズ35mmの魅力
イメージ:ブランドアンティーク弁天堂

35mmという焦点距離は、人間の双眼による自然な視野角にとても近く、スナップ撮影から風景、ポートレート、さらには目測によるノーファインダー撮影まで何でもこなせる万能な画角ですね。歴史上の各カメラメーカーも、この35mmには並々ならぬ情熱と技術を注いできました。

例えば、現代の私たちが日常的に使っているスマートフォンのメインカメラは、おおよそ24mmから28mm相当の広角レンズが搭載されていることが多いです。

それに比べると、35mmはほんの少しだけ視野が狭く、被写体にグッとフォーカスを当てたような「人間の意識的な視界」に非常に近いと言われています。街角でのスナップショットにおいて、50mmでは少し窮屈で後ろに下がりたくなるような場面でも、35mmなら周囲の空気感や背景のディテールごと自然に切り取ることができます。

その結果、多くの歴史的な写真家たちが「自分にとっての真の標準レンズは35mmである」と語り、この画角を愛用してきました。ここでは、オールドレンズの神レンズとして語り継がれる35mmの代表的なモデルと、現代のデジタル専用レンズでは決して味わうことのできない、その奥深い魅力について、じっくりと掘り下げていこうかなと思います。

ライカのズマロンやズミクロンが放つ描写

ライカのズマロンやズミクロンが放つ描写
イメージ:ブランドアンティーク弁天堂

やはり真っ先に名前が挙がるのは、ドイツのライカ(旧ライツ社)が手掛けたLマウント(L39)やMマウントの名玉たちですね。アンティーク市場においても、ライカのレンズは別格の存在感と資産価値を持っています。

伝説の「8枚玉」ズミクロンの圧倒的な存在感

中でもLeica Summicron(ズミクロン) 35mm f2 1st、通称「8枚玉」は、その極めて精巧な設計と圧倒的な解像度、そして美しいボケ味の両立から、神レンズの筆頭として世界中で熱狂的な支持を集めています。1958年に登場したこのレンズは、6群8枚という贅沢極まりない対称型のダブルガウス構成を採用しており、絞り開放から画面の中央部が驚くほどシャープに解像します。

それでいて、背景のボケは決して硬くならず、被写体を優しく包み込むような立体感を生み出します。真鍮製の鏡筒のずっしりとした重み、無限遠ロックの心地よいクリック感など、所有する喜びを満たしてくれる工芸品としての完成度も、このレンズが神格化されている大きな理由ですね。

「ボケの王様」と呼ばれる7枚玉

時代が下って1979年に登場した第4世代のSummicron 35mm f2(通称:7枚玉)も忘れてはいけません。こちらは8枚玉とは異なるアプローチで設計を見直し、開放撮影時の柔らかく美しいボケの美しさを徹底的に追求したモデルです。海外では「King of Bokeh(ボケの王様)」という愛称で親しまれており、8枚玉のシャープさとはまた違った、絵画的で情緒溢れる描写を見せてくれます。

ズマロンが魅せる時代ごとの進化

また、少し控えめな明るさを持つLeica Summaron(ズマロン) 35mmシリーズも見逃せません。F3.5の前期型は、あの名玉エルマーの後継として登場しました。4群6枚の対称型に近いレンズ構成から、歪みの少ない極めて緻密で端正な描写を生み出します。さらに、後期型になるとレンズ表面に「ブルーコーティング」と呼ばれる青みを帯びた美しい反射防止膜が施されるようになります。

このコーティングの恩恵により、カラーフィルム撮影時の発色の良さや逆光耐性がグッと向上しました。
モノクローム写真が主流だった時代から、色鮮やかなカラー写真の時代へと移り変わっていく技術の進化のプロセスを、レンズを通して肌で感じることができる。これも、とてもロマンのあるオールドレンズの楽しみ方かなと思います。

ズミルックスが作る芸術的なフレアの表現

ズミルックスが作る芸術的なフレアの表現
イメージ:ブランドアンティーク弁天堂

ズミクロンやズマロンの端正な世界から、さらに大口径の世界に足を踏み入れると、Leica Summilux(ズミルックス) 35mm f1.4 2ndなどの球面レンズが圧倒的な存在感を放ちます。

光学的な「欠陥」がもたらすシネマティックな魔法

現代の最新デジタル専用設計のレンズでは、光の乱反射によるフレアやゴースト、画面の四隅が暗くなる周辺減光といった諸収差は、「光学的な欠陥」として非球面レンズ(ASPH)や最新のナノコーティング技術によって徹底的に排除されますよね。

しかし、1960年代に設計されたこのズミルックスは、F1.4という当時としては限界に近い明るさを球面ガラスのみで実現しようとしたため、絞り開放時には強烈なフレアや、光源の周りに独特の滲み(グロー効果)が発生します。

でも、面白いことに現代のクリエイターたちは、このズミルックスの絞り開放時に現れる強烈なフレアや特有の滲みを、シネマティックで情緒的な映像表現を生み出すための「芸術的なスパイス」として高く再評価しているんです。光のベールに包まれたような幻想的なポートレートや、逆光を活かしたミュージックビデオの撮影などで、このレンズの個性が爆発します。

オールドレンズならではの醍醐味

F2.8やF4まで絞り込んでも、太陽などの強い光源を入れるとフワッと美しいフレアが入ります。これを邪魔なものと捉えるのではなく、あえて構図の中に取り入れてポートレートや動画撮影の演出に活かす。

これこそが、無菌室のようにクリアすぎる現代の機材には絶対に真似できない、ヴィンテージレンズを使いこなす最大の楽しみですね。

関連するズミタールなど50mm帯の銘玉

関連するズミタールなど50mm帯の銘玉
イメージ:ブランドアンティーク弁天堂

35mmの魅力に深くハマり込んでいくと、不思議なことに自然と「それなら、他の標準レンズはどうなんだろう?」と強い興味が湧いてくるものです。実際、当店で35mmの神レンズを探しているお客様は、同時に50mm帯の機材にも強い関心を示されることが非常に多いですね。

35mmの少し引いた客観的な視点と、50mmの被写体にグッとフォーカスした主観的な視点、この二つを使い分けることで写真表現の幅が劇的に広がるからです。

個性が光る50mmのライカレンズたち

例えば、現代的な解像感とオールドの柔らかさを併せ持つLeica Summarit-M 50mm f2.5や、その重厚な真鍮削り出しの鏡胴から「金属工芸品の極致」とも称される第一世代固定鏡胴のSummicron 50mm f2 1st Rigidは、常に探している方が絶えない人気の銘玉です。
そして、オールドレンズらしい強烈な個性を求める方には、独特の「ぐるぐるボケ」が楽しめるLeitz Summitar(ズミタール) 50mm f2などがよく話題に上ります。

沈胴式(レンズをボディ側に押し込んでコンパクトに収納できる機構)のクラシカルな佇まいでありながら、絞りを開放にしたときの背景が渦を巻くような独特の収差は、現代のレンズでは決して味わえません。広角から標準域にかけてのライカ製オールドレンズは、年代やモデルごとにどれも個性が際立っていて、本当に飽きがこない沼のような魅力がありますね。

寄れるカールツァイスのフレクトゴン

寄れるカールツァイスのフレクトゴン
イメージ:ブランドアンティーク弁天堂

ライカ以外にも、ドイツが誇るもう一つの光学の巨星、東ドイツのカールツァイス・イエナ(Carl Zeiss Jena)が設計したFlektogon(フレクトゴン) 35mm f2.4は非常に面白い、そして実用的な存在です。

広角なのにマクロレンズのように「寄れる」魔法

ライカのMマウントレンズの多くは、カメラ本体の距離計(レンジファインダー)の物理的な連動限界の都合上、被写体まで70cmや1mまでしか近づけないという弱点を持っています。カフェでテーブルの上のコーヒーやケーキを撮ろうと思っても、ピントが合わず立ち上がらなければならない…という経験をした方も多いはずです。

しかし、このフレクトゴンは広角レンズでありながら、マクロレンズのように被写体まで約20cmという極限まで接近して撮影できる(寄れる)という、驚異的で特異な能力を持っています。

M42マウント(プラクチカスクリューマウント)を採用しているため、現代のミラーレスカメラとのアダプター経由での相性も抜群です。被写体にグッとギリギリまで寄って、35mmの広い画角を活かして背景の状況を広く写し込みながらダイナミックにぼかす。このような立体的で迫力のある描写は、このレンズならではの強みですね。カールツァイス特有の濃厚でコントラストの高い色乗り(ツァイス・ポップなどと呼ばれます)も相まって、オールドレンズファンの間でも根強い人気があるのも深く頷けます。

ニコンのFマウントなど国内メーカーの銘玉

ニコンのFマウントなど国内メーカーの銘玉
イメージ:ブランドアンティーク弁天堂

もちろん、ドイツ製だけでなく、日本の光学機器メーカーが製造したレンズも現代のミラーレスカメラで素晴らしい実力を発揮します。特に「質実剛健」を地で行くニコン(旧 日本光学)のレンズ群は、プロの過酷な現場を支え続けてきただけあって、その信頼性と描写力は折り紙付きです。

例えば、1982年に発売された日本光学のFマウントレンズである「Ai Nikkor 35mm f1.4S」(7群9枚構成)などは、その代表格です。F1.4という大口径でありながら、絞り開放時の良好なピント面の描写はもちろん、当時の優れたコーティング技術により、なかなかの逆光耐性も備えています。

当時の終売価格で121,000円という、おいそれとは手が出ない高級品でしたが、35mmならではの広い被写界深度(ピントの合う範囲)を活かしたサクサクとしたノーファインダー撮影(ファインダーを覗かずに勘でピントを合わせてシャッターを切る速写技術)にも適した銘玉として、現在でも中古市場でしっかりと認知され、高く評価されていますね。

フォクトレンダーのNOKTONへの関心

フォクトレンダーのNOKTONへの関心
イメージ:ブランドアンティーク弁天堂

「古い機材のノスタルジックなテイストは大好きだけれど、何十年も前のレンズだとガラスのクモリやカビ、ヘリコイド(ピントリング)のグリス切れといったコンディションや、今後のメンテナンスがどうしても心配…」というお悩みを抱える方も少なくありません。

そんな方々からは、日本の長野県に本拠地を置く光学機器メーカー「コシナ」が製造するVoigtlander(フォクトレンダー)ブランドのNOKTON 55mm F1.2 SLIIsなどの現行クラシックレンズ群が、現在熱い視線を集めています。これらのレンズは、最新の超高精度なガラス加工技術やマルチコーティングを使いながらも、あえてオールドレンズ特有のクラシカルな描写テイストや、金属製鏡筒の重厚な操作感を意図的に再現しているのが最大の特徴ですね。

電子接点を備えていてカメラボディと通信できるモデルもあり、手ブレ補正やExif情報の記録といった最新の機能的恩恵を受けつつ、写りはヴィンテージ。こういった「ヴィンテージの香りを楽しめる、保証の効く新しいレンズ」という素晴らしい選択肢があるのも、マウントアダプター文化が成熟した現代のカメラ市場のとても豊かなところかなと思います。

タクマーと写真家である梶原琢磨の歴史

タクマーと写真家である梶原琢磨の歴史
イメージ:ブランドアンティーク弁天堂

そして、日本のオールドレンズ市場を語る上で絶対に外してはならないのが、旭光学工業(現在のリコーイメージング・ペンタックス)が展開した「タクマー(Takumar)」シリーズですね。Super-Takumar 35mm F3.5や55mm F1.8などは、中古市場でも比較的安価で流通量も非常に多く、美しい虹色のフレアやゴーストを手軽に楽しめることから「オールドレンズの登竜門・入門用」として大定番となっています。でも、皆様はこの「タクマー」という印象的な名前に隠された、ある壮大な歴史をご存知でしょうか?

海を渡った兄弟の絆と栄光

旭光学の創業者である「梶原熊雄(Kumao Kajiwara)」氏には、実の弟である「梶原琢磨(Takuma Kajiwara)」という人物がいました。この弟の琢磨氏は、まだ海外渡航が珍しかった時代に海を渡りアメリカへと渡航します。そしてアメリカの地で写真技術を極め、なんと「米国における7大写真家の一人」と称されるほどの大成功を収めた、極めて優れた芸術家だったんです。

彼の撮影したポートレート作品などは、今でもアメリカの権威ある大学などの機関に永久収蔵されているほどです。

日本の光学産業の黎明期において、新しいカメラ用レンズの開発に心血を注いでいた創業者の兄・熊雄氏は、異国の地で写真芸術家として歴史的な名声を確立した自慢の弟に対する深い敬意と、一族の誇りを込めました。

そして、自社の主力となるレンズ群のブランド名に、弟の名を冠して「タクマー」と名付けたのです。私たちが普段何気なく使っている単なる工業製品の背後に、日米を股にかけた一族の壮大な成功のドラマと兄弟の絆が秘められている。そう思うと、少し冷たい金属のレンズ越しの景色も、どこか温かく、いつもと少し違って見えてくるかもしれませんね。

オールドレンズの神レンズ35mmの注意点

オールドレンズの神レンズ35mmの注意点
イメージ:ブランドアンティーク弁天堂

ここまで、歴史とロマン、そして光学的な魅力が溢れるヴィンテージ機材の素晴らしい世界をお伝えしてきました。しかし、その爆発的な人気と、近年急激に高まっている投機的な資産価値の高さゆえに、事前に知識として知っておかないと大きな金銭的損害を受けてしまう深刻な落とし穴も存在します。

ここからは、オールドレンズの神レンズ、特に人気のある35mmの機材を中古市場やオークションで探す際に、皆様に必ず意識してほしい「価格の裏側の構造」や、昨今世界的に急増している「悪質な偽造品問題」について、長年アンティーク品を鑑定・販売してきたお店のオーナーとしての視点から、少し厳しく、赤裸々にお話ししますね。

販売価格と買取価格の大きな構造的乖離

販売価格と買取価格の大きな構造的乖離
イメージ:ブランドアンティーク弁天堂

皆様がオールドレンズの価値をご自身で調べる際、最も誤解しやすく、トラブルになりやすいのが「金額」の見方です。ネットの検索結果やブログで見かけた「このレンズは5万円の価値がある」という情報が、「お店が一般のユーザーに販売している価格」なのか、それとも「お店がユーザーから買い取る際の仕入れ価格」なのかを、まずはしっかりと区別する必要があります。

実は中古市場では、この二つの価格の間に約2倍近い構造的な乖離(スプレッド)が存在するのが普通なんです。

レンズ名称市場での販売相場目安専門業者の買取上限目安
Leica Summaron 35mm F3.5約50,000円〜100,000円前後約40,000円〜56,880円程度
Carl Zeiss Jena Flektogon 35mm f2.4約28,000円前後(オークション実勢)変動あり(店舗による)
Super-Takumar 35mm F3.5比較的安価(数千円〜)最大3,000円台程度

なぜこれほど価格に差が出るのか?

「半値近くで買い叩かれているのでは?」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、なぜここまで大きな差が出るのかというと、ちゃんとした買取業者や専門店は、買い取ったレンズをそのまま右から左へ横流ししているわけではないからです。半世紀以上前の機材ですから、買い取った段階で内部にクモリやカビが発生していたり、ヘリコイドのグリスが劣化して動きが重くなっていたりすることが多々あります。

専門店では、専門の技術者がこれらを分解・清掃し、可動部のメンテナンスを行い、欠品している純正のレンズフードやキャップなどの主要付属品を補充します。さらに、実店舗の運営コストや、販売後にお客様へ提供する「動作保証」のリスク(万が一すぐに壊れた場合の無償修理費用など)を全て含めた上で、最終的な販売価格を決定しているのです。

この「販売と買取の二面性」を事前にしっかりと理解しておかないと、いざ手放す時に「安く買い叩かれた」と勘違いしてしまったり、逆に購入時の相場を見誤ってしまったりするので、くれぐれも注意が必要ですね。

正規の販売価格と安価な偽造品の見分け方

そして現在、オールドレンズをはじめとするブランド中古市場で最も深刻かつ悪質な問題となっているのが「偽造品(フェイク・スーパーコピー品)」の蔓延です。過去の偽物は、ひと目見ればおもちゃだと分かるような粗悪なものが多かったのですが、状況は一変しています。

最新のCNC旋盤などの超精密な金属加工技術の発達により、真鍮製鏡筒のひんやりとした重みや質感、マウント部の複雑な形状、果てはブランドロゴや文字の刻印フォントに至るまでを極めて忠実に模倣した精巧な偽物が、悪質なオンラインサイトを通じてグローバル市場に大量に流入しているのです。

異常な低価格には絶対に手を出さない

これらの悪質なスーパーコピー品を見抜く最大のポイントは「非常識なまでの低価格設定」です。先ほど表で見ていただいた通り、例えばライカのSummaron 35mm f3.5の適正な専門業者での「買取上限相場」は4万円〜5万円台です。お店はこの金額でお客様から買い取っているわけです。それにもかかわらず、「新品同様(ミントコンディション)」などと謳って、ネット通販で1万円や2万円で一般向けに販売されているケースがあります。

買取相場を下回る価格で一般販売されることは、経済の原則上、絶対にあり得ません。

著しく安価な商品は、間違いなく精巧な偽造品であるか、あるいはお金だけを振り込ませて商品を送ってこないフィッシング詐欺サイトだと疑ってかかってください。最近では、実在する通信販売サイトを装った悪質な偽サイトが数多く報告されており、消費者庁でも注意喚起が行われています(出典:消費者庁『「偽サイト」にご注意ください!』)。

「掘り出し物を見つけた!」と焦って飛びつく前に、冷静に相場と照らし合わせることが大切です。

ちょっとした情報の探し方のコツと注意点

情報収集の際、例えば「弁天堂」と検索エンジンに入力すると、上野公園にある不忍池弁天堂さん(由緒ある宗教施設・歴史的建造物)や、YouTubeで朗読動画などを配信されているBentendoさん(クリエイター)、そして当店のような古物・ブランド品の買取販売店など、全く属性の異なる結果が混在して出てきます。

名前が同じでも全く別の実体ですので、検索する時は自分が知りたい情報(上野の観光情報なのか、動画コンテンツなのか、カメラの相場や買取依頼なのか)に合ったサイトかどうか、情報の出どころをしっかり見極めることも、ネットリテラシーとしてとても大切ですね。

シリアルナンバー照合による正規品の鑑別

シリアルナンバー照合による正規品の鑑別
イメージ:ブランドアンティーク弁天堂

読者の皆様が、悪質な偽物をうっかり購入してしまう悲劇を未然に防ぐためには、本物の機材だけが持つ固有の特徴を知ることが、最大の自己防衛策になります。

外観の金属部分はCNCでコピーできても、1950年代から60年代当時の特殊な光学ガラスを現代の業者が安価に完全再現することはほぼ不可能です。例えば、当時は屈折率を高めるために「酸化トリウム(いわゆる放射能レンズ)」や「ランタンクラウンガラス」といった、現在では環境規制等で製造が難しい特殊な素材が惜しげもなく使われていました。

これらが経年変化で特有の黄変(黄色っぽく変色する現象)を起こしていたり、昔のガラス製造工程で生じた微小な「気泡」(当時は高品質なガラスの証拠とされていました)が含まれていたりします。また、ズマロン後期型などの独特の反射光の色合い(ブルーコーティングなど)も、鑑別の大きなヒントになります。

また、最も確実な防衛策の一つが「シリアルナンバーのデータベース照合」です。ライカなどの高級な銘玉には、製造年や製造ロットを示す固有のシリアルナンバーが必ず刻印されています。

購入前には必ず、そのシリアルナンバーとレンズの仕様(焦点距離、明るさ、マウントの規格など)が、メーカーの公式な製造記録データベースや専門書と完全に合致するかを確認する癖をつけてくださいね。偽造品は、一つの本物の番号を大量に使い回したり、実在しない年代の番号を適当に打刻していることが多いのです。

最終的な判断は専門家へ

ここで解説した価格の相場観や真贋の見分け方は、あくまで一般的な目安に過ぎません。悪質なコピー品の手口は日々巧妙化・アップデートしているため、ご自身の知識だけで安易に判断するのは大きなリスクを伴います。

出所が不明な海外のオークションサイトやフリマアプリ等は避け、各都道府県の公安委員会から「古物商許可証」を正規に取得し、確かな真贋判定の技術と販売後の保証制度がしっかりと整っている、国内の信頼できるカメラ専門店やアンティークショップで購入することが、結果として皆様の大切な財産を守る一番の近道かなと思います。

正確な情報はメーカー公式サイト等をご確認いただき、最終的なご判断はプロの専門家にご相談ください。

オールドレンズの神レンズ35mmの総括

オールドレンズの神レンズ35mmの総括
イメージ:ブランドアンティーク弁天堂

いかがでしたでしょうか。「オールドレンズ 神レンズ 35mm」というキーワードの奥には、単に「古い機材を使ってエモい写真を撮ってみたい」という表面的な好奇心にとどまらず、素晴らしい描写を生み出すために心血を注いだかつての光学技術への敬意や、タクマーの梶原琢磨氏のような歴史的なロマン、そして本物を見極めたいという深い探求心がギッシリと詰まっています。

ライカやカールツァイス、ニコン、ペンタックスなど、各国のメーカーが魂を込めて作り上げたこれらの銘玉は、もはや単なる工業製品の枠を超えた「後世に残すべき文化遺産」と呼ぶにふさわしい存在ですね。

一方で、その芸術的・資産的な価値の高さゆえに、販売と買取における価格の複雑な事情が存在し、さらにはその人気を悪用しようとする悪質な偽造品や詐欺サイトが暗躍しているという、厳しく現実的な側面も持ち合わせています。ヴィンテージレンズの世界を安全に、そして心から末永く楽しむためには、正しい知識を身につけ、信頼できる情報源と購入先を見極める眼を持つことが何よりも大切です。

マウントアダプターを介して現代のデジタルカメラに装着した瞬間、モニターに映し出される半世紀前の光。それは、現代の最新レンズでは決して描けない、あなただけの特別な一枚を約束してくれます。

今回の記事が、皆様にとってオールドレンズの深淵なる世界をより安全に楽しむための、確固たる羅針盤となれば、アンティーク品を愛する人間の一人としてとても嬉しいです。

  • この記事を書いた人
岩本雄二

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オーナーの岩本雄二です。 2011年3月に古物商として起業し、10年以上実店舗を運営してきました。
現在は無店舗型古物商として活動しています。

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